来 歴

半分

居心地のわるい胸の中を
さつさと去つてゆく風がある
他の声は霧のようにうすら寒く滞つて
よろよろと胃袋を押している
風だの声だの霧だのは
四六時中人間のまわりをうろついている
そのせいでここからみえる景色は
半分だけが眼の中にある
ほかの半分は向う側にもないだろう
この先は話がちがうから
誰も口を出すことができない
話し手が誰なのかわからないのだ
「見ていたのと見られていたのとでは
どつちが私だつだのか」と
私は誰に話しかければよいのだ
とにかく半分だけはわかつている
あとは私の持物に
ほかの半分がなるまでとつてある

原文のまま。っがつとなっています。

来歴目次